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《 zio の La piccante vita 》 -ULTIMO-(2002/07/15)   <バックナンバー>

Ciao carissimi!
(チャオ カリッスィミ!/やあ、みんな)
C'e una cosa da dirvi.
(チェ ウーナ コーザ ダ ディルヴィ/みなさんに一つ報告しなければなりません)
Con questa puntata "La piccante vita" di zio si e conclusa.
(コン クエスタ プンタータ "ラ ピッカンテ ヴィータ" ディ ツィオ スィ エ コンクルーザ/今回の更新をもって、zioの"La piccante vita"は最終回を迎えます)
Il contenuto sara una specie di chiacchiere molto personale.
(イル コンテヌート サラ ウーナ スペーチェ ディ キアッキエレ モルト ペルソナーレ/最終回の内容は、とても個人的な『おしゃべり』になるはずです)
Spero che sia una gran finale, ma non ne sono sicuro per niente.
(スペロ ケ スィーア ウーナ グラン フィナーレ、 マ ノン ネ ソーノ スィークーロ ペル ニエンテ/感動的な最終回となることを切に願っていますが、全く自信はないです)
Allora vado?
(アッローラ ヴァード?/じゃあ、はじめますか?)
Ok vado!
(オーケー ヴァード/はじめましょう!)
                                   ※
"Italia, un paese tanto amato e odiato"

イタリアでの仕事も終わり、ついに帰国することが決定しました。今回のイタリア滞在は約1年2ヶ月。
旅行でもなく、遊学、留学でも、取材等の仕事でもない今回のイタリア生活は、良い意味でも悪い意味でも、今まで気づくことのなかったイタリアの一面を体験することができました。
帰国が決定したことを仕事仲間や友人のイタリア人に告げた時、彼らは決まって私にこんな質問をしました。
"Sei contento?"(セイ コンテント?/(日本に帰れて)嬉しい?)
それに対して、私は"Si, sono contento"(スィー、ソーノ コンテント/うん、嬉しいよ)と答えていました。
すると彼らは決まってこんな質問を返してきました。
"Ma ti piace Italia o no?"(マ ティ ピアーチェ イターリア オ ノー?/ふーん。ていうか、イタリアのこと好き?嫌い?)
「イタリアが好き」。確かに、シエナで語学留学をしていたころや、ボローニャで大学に通っていたころは、
"Si, mi piace!"(スィー、ミ ピアーチェ/うん、大好き)と即答していました。ところが、今回は即答できません
でした。即答どころか、返答できなかったのです。そして、しばらく考えた後に出てきたのが、次の答えでした。
"Si mi piace.....ma....non lo so....si, forse si, mi piace Italia, ma nello stesso tempo l'odio"
(スィー ミ ピアーチェ…マ…ノン ロ ソ…スィー、フォルセ スィー、ミ ピアーチェ イターリア、マ ネッロ 
ステッソ テンポ ローディオ/うん、好きだよ…でも…どうかな…うん、たぶんね、イタリアは好きだよ、でも同時に大嫌い)

そうなんです。正直言って、「イタリアは、好きだけど、大嫌い」もしくは「イタリアは大嫌いだけど、好き」なんです。これは「好きでも嫌いでもない」とも「普通かな〜」とも「別に考えたこともない」とも違うんです。言葉にしてしまうと曖昧なんだけど、私の頭や心の中ではとても明確に「イタリアは好きだけど、大嫌い」という結論に達したのです。

 何故なんだろう。どうして、以前のように両手を広げて「イタリアが好きだ」と言えなくなってしまったのだろう。
 イタリアの嫌な面を見過ぎたのだろうか?
 イタリア人の嫌な面を見過ぎたのだろうか?
 イタリアの文化に飽きてしまったのだろうか?
 イタリアの生活に飽きてしまったのだろうか?

答えは『否!』です。
確かに、イタリアやイタリア人の「嫌な面」、例えば外国人労働者(特にヨーロッパ圏外からの外国人)に対する矛盾に満ちたイタリア政府の対応や、イタリアを含むヨーロッパ諸国が他の文化圏(アジア、イスラム、アフリカ)よりも『進んでいる』と頑なに信じて止まないイタリア人の尊大さには、なんども辟易させられました。
でも、それは7年前初めてイタリアの土を踏んだときから何も変わっていないことですし、多分100年前も1000年前も、イタリア人のイタリア気質を司る『何か』は存在していたはずです。

そう、そうなんです。変わったのはイタリアやイタリア人ではなく、私自身だったのです。

それを強烈に感じたのは、ボローニャ駅のマク○ナルドででした。ちょうど夕飯時で込んでいた店内に入り、比較的空いている列に並んで辛抱強く自分の番を待っていました。注文したのはマッ○ロワイヤルのセット。
するとレジの女性(ひげが濃かったけど、やっぱり女性でした)は、"Non c'e"(ノン チェ/ありません)と一言。
「お待たせしますが…」ではなく"Non c'e"だったのです。不審に思いながらも、ないモノはないのだから、仕方ありません。ビッ○マッ○ならある、というので泣く泣くビッ○マッ○のセットに決定。ヒゲ濃いめの女性は、ファーストフード店の店員としては非常にゆったりとした動作でポテトやドリンクを用意し、いざビッ○マッ○というところで、手ぶらで戻ってきたのです。そして一言"Non c'e neanche questo"(ノン チェ ネアンケ クエスト/これもありませんでした)。

以前までだったら、「まあ仕方ない。イタリアだもん」と確実に我慢できたんです。でも、今回ばかりは爆発してしまいました。横山やすしバリの勢いで"Hai detto tu che c'era il Bi○Ma○ o no?"(アイ デット トゥ ケ チェーラ イル ビッ○マッ○ オ ノー/ビッ○マッ○ならあるって言ったのはおまえじゃないんかい!)と怒りのつっこみを入れてしまいました。
するとこの店員、自慢のヒゲをヒクつかせて謝罪する訳でもなく、代わりのメニューを勧めるでもなく、"Non c'e"を繰り返すばかり。
何も買わずにマク○ナルドボローニャ駅店を出たのは言うまでもありません。

このようにイタリア人に対して短気を起こしたり癇癪を起こしたり、果てはケンカまでしてしまうようになったのです。
そして"Che paese di merda"(ケ パエーゼ ディ メールダ/なんてひでえ国なんだ)と、心の中で悪態をついていました。

今振り返ると、イタリア生活を本当の意味でエンジョイしていたころは、自分が異邦人であることを強く意識していたと思います。それはそのまま、自分とイタリアやイタリア人の間に心地よい距離があった、ということです。
ところが、今回は仕事という目的でイタリアへ渡り、イタリア人の中で比較的責任のあるポストを任されたためか、心地よかった距離が次第にしがらみへと変化していたのです。距離だけでなく、自分の中の異邦人であるという感覚も稀薄になっていました。
7年前、私がたどたどしいイタリア語で買い物をしているときに、親切に対応してくれたイタリア人の笑顔や、旅先で知り合ったイタリア人たちの心温まるホスピタリーや、パーティーで馬鹿騒ぎした友人たちの陽気さ。このようなイタリアのポジティブな面ばかりを見続けそれらを記憶してきた私は、いつしか騙し合いや無関心、無責任、不寛容に満ちあふれるネガティブな面も見ざるを得なくなっていました。私の周りにも、やはり眉間にしわを寄せいがみ合っているイタリア人がいたり、たわいもないことで口げんかをしたり、殴り合って血を流しているイタリア人がいるのです。
そして、私もそんな彼らに混じって、眉間にしわを寄せ、悪態をつき、ケンカをしていました。

あれっ?でもこれって、日本で暮らしていても同じだよ!

もし、誰かが「日本のこと好き?」って私に尋ねたとしても、やっぱり「好きだけど大嫌い」と答えるかもしれません。
ということは…

トータル7年のイタリア生活を通して、私はようやく現実のイタリアに近づくことができたのではないでしょうか。良い面も悪い面も、実際に自分の目と身体と心で体験し、自分の頭で判断してきたからこそ、今、私は自信を持って言えます。

"Italia, il mio secondo paese tanto amato e odiato"
(イターリア、イル ミオ セコンド パエーゼ タント アマート エ オディアート/イタリア、愛し、憎んだ私の第二の故郷)
                                 *

約1年にわたってお付き合いいただき、ありがとうございました。
「刺激的な」イタリアの姿をお伝えする、という当初の企画意図は、ある意味本当に刺激的すぎて書けないことばかりだったんです。もし、もっと刺激的なイタリアを見たい、知りたいと思っているのなら、是非、ご自分でイタリアに行ってみるのが一番最良の方法だと思います。 Vi augro una buona vita.
Ciao Ciao Ciao!
amore e pace
zio
zioのコーナーはこれにて終了致しました。