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LIBRO(本): 「須賀敦子のミラノ」 (2001/06/04)

ある日、友人が、「面白い本を見つけた」と言って1冊の本を紹介してくれました。
その時メールには「君が死んだら”アニマータの聖地を巡る”とか言う本の取材のために、イタリアを転々としてみたいなぁと思いました。あ、その前に旦那が死んだらイタリアに住んでね ☆/(x_x)バキッ!!☆」なんてのたまっておりました。

一体何のことかいなぁ...と思って興味も湧いて、すぐに楽天ブックスの買物かごにポン!

出版社:河出書房新社
著者:大竹昭子
サイズ:単行本 / 142P
発行年月: 2001年 04月
本体価格: 1,800円

イタリア文学者であり、作家でもある”須賀敦子”という人を、恥ずかしながら今回初めて知りました。
昭和33年にイタリアに再留学し、イタリア人と結婚し、死別して42歳の時に帰国。上智大学教授や朝日新聞書評委員も務める。著書に「トリエステの坂道」「ユルスナールの靴」、エッセイに「ミラノ 霧の風景」「コルシア書店の仲間たち」「ヴェネツィアの宿」「地図のない道」、訳書にナタリア・ギンズブルグ「ある家族の会話」「マンゾーニ家の人々」「モンテ・フェルモの丘の家」、アントニオ・タブッキ「インド夜想曲」他。没後の平成12年に「須賀敦子全集」(全8巻,河出書房新社)が刊行される。平成10年没。

そして、これは、著者大竹昭子さんが、須賀さんのミラノ時代の足跡をたどり、その場所場所を訪れ、関係者を訪ね、話を聞きながら、彼女のこの街での日々を追想するもの。(これで冒頭の友人の言葉が理解できました。)

本文に入る前の何点かのミラノの美しい写真で、いきなり自分がミラノにワープしたような錯覚に陥ります。文章も美しくエレガントな印象を受けますが、更に写真がとても美しい。
何点か効果的にモノクロ写真も使われていて、見るだけでミラノの香りがふわっと漂ってくるようなカンジさえします。

須賀さんも大竹さんもまったく初めてで、かつミラノには何度も足を踏み入れている私にとって、この本はなかなか勢い良く読み進むことができないものでした。

昭和30年代という時代、”コルシア書店”という宗教色の強い書店、階級闘争、反体制.....など、なかなか入ってきにくい事柄も多い中、引用で出てくる須賀さんの文章に表れる、たくましさと力強い意志、賢さにじわじわと感動し、また、当然拭い切れなかったであろう深い孤独感に対する静かで繊細な表現にも、心が痛くなるような感覚を覚えます。
それはつまり、大竹さんの彼女への想い、そして、するどい洞察力、細やかな感性によるものが大きいということです。街の風景の描写も、私が漠然と感じていたことを明確に表現されていて、何度も読み返すということが幾度となくありました。
いわゆるガイドブックに載っているようなチェントロ(町の中心地)よりも、少し東に外れた地域が須賀さんのミラノ生活の”軸”になる場所で、そこから始まって、彼女の作品に出てくる場所や、歴史的な事柄などが1つずつ丁寧に紹介されているので、観光や買物という面でしか見ていなかったミラノを、改めて、じっくり歩いてみたいと思わせます。巻頭にある地図も分かりやすいです。
そして、頑張って須賀さんの作品も読んでみようと思いました(全集はそれぞれ500ページ以上もの大作で、一冊5,000円前後して、それが8巻もあるのですから......)。

ゆっくりミラノを訪れる時間のある方は、是非この”須賀敦子のミラノ”を読まれることをオススメします。